小学校英語教科化/早期化1年目を終えて学校現場の現状をイーオンの「小学校の英語教育に関する教員意識調査2021」から考察
小学校で英語教育が本格的にスタートして1年が経ちました。
昨年は1年目でありさらにコロナの影響で非常に大変な1年目だったと思います。
先月、英会話教室を運営する株式会社イーオンが、現役小学校教員を対象とした「小学校の英語教育に関する教員意識調査2021」を実施しその結果が発表されました。
今日はその結果を見ながら今後の課題などを考えていきたいと思います。
実際に英語を指導した教師の皆さんが1年目を振り返ってどう感じたのかが調査結果として出てきています。
この結果をもとに、改善できることは改善し、より良い結果が今年度末には出るようにしなければいけません。
調査対象:現役小学校教員134名 調査方法:イーオンが2021年3月6日に開催した「小学校教員向け指導力・英語力向上オンラインセミナー」(後援:文部科学省)の参加希望者の応募条件として調査。
1. 小学校5-6年生に英語を「教科」として教える先生の授業運営の状況
2. 小学校3-4年生に「英語活動」を行う先生の授業運営の状況
3. 英語のみを教える「専科教員」増員の方針について
4. 新学習指導要領下の英語について、予定通り進めることが難しい・課題と感じた点
5. 自身の英語スキルアップにかけられる時間について
6. 最後に
小学校5-6年生に英語を「教科」として教える先生の授業運営の状況
最初の質問は実際に小学校5,6年生の英語を受け持った教師の方に対して聞いたものです。
新学習指導要領において英語の授業運営はどうか
新学習指導要領において、実際に小学校5-6年生の英語を「教科」として教えた先生(57名)に、授業運営がうまくいっているかを尋ねた結果が以下のフラフです。

調査結果
「うまくいっている」…2名(3%)
「おおむねうまくいっている」…18名(32%)
「あまりうまくいっていない」…8名(14%)
「うまくいっていない」…16名(23%)
「何とも言えない」…13名(23%)
小学校英語で教えるのが難しいと感じている項目

授業運営が「うまくいっていない」「あまりうまくいっていない」と回答した24名を対象に、教えるのが難しいと感じている項目について尋ねた結果が上のグラフです。
調査結果
「スピーキング(やりとり)」20名
「スピーキング(発表)」13名
「リスニング」6名
「ライティング」6名
「リーディング」4名
実際に教えている先生は、4技能5領域のなかで「スピーキング」を教えるのが難しいと感じていることがわかりました。
小学校英語うまくいっていると感じている項目
授業運営が「うまくいっている」「おおむねうまくいっている」と回答した20名を対象に、うまくいっていると感じている部分を自由回答で尋ねた結果が以下のものです。
回答結果
- 教科になり評価することが具体的になることで、目指す児童の姿に向けた指導ができるようになった
- 積み重ねにより、子供たちがどんどん英語に興味をもって聞いたり話せたり出来るようになった気がするから
- 話す聞くに関して、子どもたちができるようになったことが多くあるから
調査からの見えること
うまくいっている、おおむねうまくいっていると答えた教師の数が、うまくいっていない、あまりうまくいっていないと答えた教師を下回っています。
小学校5.6年生はこれまで週一時間程度の外国語学習があったので英語を前年までに指導した経験があった教師の方も多かったのではないかと思いますが、それでも自分の専門出ない教科を自分が納得いく形で授業をすることができるようになるまでにはまだ時間が必要ということではないでしょうか。
さらに、教えるのが難しいと感じている項目はスピーキングという意見が多かったようです。英語の読みや書き取りは日本の英語教育を受けてきた教師の皆さんからならそれほど難しくはないと思います。
しかし、自分が英語をしゃべることができないのに子供たちにスピーキングを指導したり、評価をするのが難しいと感じるのは当然のことです。
スピーキングの指導の質を上げるのはすぐには難しいが事実です。
結局、小学校の5.6年生では教科担任制に移行し始めているので少しでも英語教師の方が英語の指導を受け持つようになることが一番簡単な方法だと思います。
小学校5.6年生での教科担任制については『2022年度から小学校5・6年生に教科担任制が本格導入されたら学校現場は助かるのか』で紹介していますので参考にしてください。
「J-SHINE認定」児童英語教師養成講座で資格を取得して自信をもって子供たちに英語を教えてみませんか?
教師の方や子供たちに英語を教えたい情熱のある方にお勧めです。
「Teyl-JAPAN」ならオンラインで学ぶことができます。
小学校3-4年生に「英語活動」を行う先生の授業運営の状況
次に、英語教育の早期化を受けて英語活動を行う3-4年生担当の教師の方の調査結果です。
新学習指導要領において英語の授業運営はどうか
新学習指導要領において、実際に「英語活動」を3-4年生に行うこととなった担当の先生(50名)に、授業運営がうまくいっているかを尋ねた結果のグラフが下のものです。

調査結果
「うまくいっている」…0名(0%)
「おおむねうまくいっている」…14名(28%)
「あまりうまくいっていない」…10名(20%)
「うまくいっていない」…14名(28%)
「何とも言えない」…12名(24%)
「うまくいっている/おおむねうまくいっている」が28%(14名)にとどまり、「うまくいっていない/あまりうまくいっていない」48%(24名)を大きく下回る結果となりました。
調査からの見えること
今年から始まった小学校3,4年生での英語活動を担当した教師の皆さんは、苦労された事が見て取れる結果になりました。
うまくいっていると答えた教師の方がゼロ。小学校5.6年生の担当教師の結果と比べてもうまくいっていない方の割合が多くなっています。
初年度ということで例もなく自分で手探りで授業をされた方が多かったのではないでしょうか。
英語のみを教える「専科教員」増員の方針について
英語のみを教える専門教員の増員について聞いた質問の結果です。
英語専科増員についての意見
小学校の英語教育改革に伴い、文部科学省が今後学級担任を持たず英語のみを教える「専科教員」の増員を進めていく考えを示していることについての意見をまとめたのが下のグラフです。

調査結果
「とても良いと思う」64名(48%)
「どちらかといえばよいと思う」43名(32%)
「どちらかといえば不安に思う」5名(4%)
「不安に思う」2名(1%)
「何とも言えない・無回答」20名(15%)
英語専科配置についての意見からの考察
現場の教師の方は48%(64名)の先生が「とてもよいと思う」と回答。
「どちらかといえばいいと思う」と合わせると8割の先生が概ね方針に対し好意的な意見を持っていることが明らかとなりました。
最近は世間から教師の長時間労働が指摘されるようになってきました。
英語教育、プログラミングの授業から始まり、教科書のデジタル化による授業方法の変更など多くの負担がさらにかかっています。
真面目な教師の方ほど夜遅くまで教材研究をしたり、子供たちの事を思って必死に働きます。
そしてそういった教師の方が結局オーバーワークで精神病になったりという事が増えているのが現状です。
文部科学省は教師の魅力を発信して教師のなり手を増やそうとしていますが、今の現状では無理です。
真面目に働くほど損をする職場に入りたいと思うはずがありません。
少しでも現場の教師の方が子供たちと向かい合える時間が増えるような政策を進めていってほしいと願うばかりです。
デジタル教科書の導入については『デジタル教科書を使うメリット、デメリットまとめと教科書デジタル化の普及の現状』でまとめていますのでご覧ください。
「J-SHINE認定」児童英語教師養成講座で資格を取得して学校で子供たちに英語を教えててみませんか?
英語を教えたい情熱のある方を教育現場は求めています!
「Teyl-JAPAN」ならオンラインで学習することができます。
英語のみを教える「専科教員」増員の方針について
同調査では、小学校英語の教科化、早期化で難しかった点や課題も尋ねています。
英語教育を実践しての難しかった点や課題

2020年4月から実施された新学習指導要領による小学校英語の教科化・早期化について、新型コロナウイルスの影響を受け、予定通り進めることが難しかった点・課題と感じた点を尋ねた結果です。
「児童の評価の仕方」(61名)
「自身の英語指導力」(46名)
「自身の英語力」(43名)
「検定教科書に対する自身の理解・研究」(32名)
と続いています。
難しかった点や課題に対する調査からわかること
2020年4月から実施された新学習指導要領による小学校英語の教科化・早期化は、新型コロナウイルスの影響を受け波乱のスタートの中、授業数が確保できなくてその中でも教科という事で評価しなければならない状況になったことが予想できます。
特に評価を付ける1年目。評価の基準もはっきりとわからないままスタートした事が原因の1つです。
次に多かったのが「自身の英語指導力」(46名)、「自身の英語力」(43名)など自身のスキルに関する項目です。授業運営がうまくいかな原因の一つが自身の英語力不足、指導力不足と考えている教師の方が多いことがわかります。
他の教科同様に日々の実践と研究から指導力はついてくるものなので毎年少しずつ改善されていくと考えられます。
自身の英語スキルアップにかけられる時間について
最後にイーオンの集計という事で教師自身の英語力アップへの取り組みについての質問結果です。
教師の英語力アップへの取り組みの現状
教師自身の英語力アップのための取り組みについて、どの程度日常的に時間をさけているのか尋ねた結果が下のグラフです。

調査結果は「全く取れない」と回答した方が18%(25名)、「1日1時間未満」とあわせると9割近くの方が1時間に満たないと回答しています。
週あたりでは「週1-3時間」が43%(62名)と最も多く、「週4時間以上」という回答も14%(21名)となりました。
忙しい教師の方がわざわざ英語力アップのために英語学習を始めるとは考えにくいです。
おそらくこの時間は教師自身が授業の教材研究として指導する部分を調べたりした時間が含まれていると思います。
そのため限りなくゼロに近いのではないでしょうか。
教師の英語力をアップさせたいのであれば、自治体がお金を出して夏休み期間に数週間希望の教師の方を語学学校へ通わせたり、イーオンなどの英会話学校と提携して講習会を開いたりしてみてはどうでしょうか。
最後に
小学校英語の教科化、早期化により3年生から英語学習が始まって1年が経ちました。
色々な課題はありますが、教師の方だけに任せるのではなく学校、自治体そして国からのサポートが必要であることは明確です。
今年度から小学校では35人学級への移行がスタートしました。
ここで教員の確保が問題になってきます。
35人学級移行による教員増員と専科の教員の増員がどちらもスムーズに行われることが理想ですが、予算の関係上難航することが予想されます。
(35人学級移行についてのニュースは『公立小学校35人学級へ移行決定に見る少人数学級のメリットデメリットと今後の課題!諸外国との比較』で紹介しています。)
日本の未来を背負う子供たちに国はもう少し積極的に投資をしても良いのではないかと感じるのは私だけではないはずです。
英語教育2年目が4月から始まりました。
忙しい中で必死に教材研究に取り組む教師の皆さんの役に立つ政策が実施されることを祈るばかりです。
記事引用(外部リンク)
イーオン、現役小学校教員を対象とした「小学校の英語教育に関する教員意識調査2021」を実施
「J-SHINE認定」児童英語教師養成講座で資格を取得して自信をもって子供たちに英語を教えてみませんか?
目の前にいる子供たちのために自分の英語の指導力をアップ!
「Teyl-JAPAN」ならオンラインで学ぶことができます。
- 関連記事
-
-
公立小学校35人学級へ移行決定に見る少人数学級のメリットデメリットと今後の課題!諸外国との比較【教育ニュース】
-
小学校英語教科化/早期化1年目を終えて学校現場の現状をイーオンの「小学校の英語教育に関する教員意識調査2021」から考察
-
デジタル教科書のデメリット、メリットまとめ!教科書デジタル化の普及の現状【教育ニュース】
-
英語圏で流行った18の”Buzzword”(流行語)で2020年を振り返る!あなたの”Word of the year”(今年の言葉)は3密?
-
大阪府とUSJが連携して取り組む英語教育とは?企業と提携する英語教育のメリット、デメリット【英語教育ニュース】
-
デジタル教科書の使用時間制限撤廃によるメリット、デメリットと今後の課題を考察!【教育ニュース】
-
朝日町で行われた公開授業を基に学習者向けデジタル教科書導入に向けての課題をと考える【英語教育ニューズ】
-
2022年度から小学校5・6年生に教科担任制が本格導入されたら学校現場は助かるのか【教育ニュース】
-
気持ちを新たに苦手な英語を克服したい方に!
⇒特典いろいろ!Amazon Prime加入で新生活をさらにお得に!




