公立小学校35人学級へ移行決定に見る少人数学級のメリットと今後の課題!諸外国との比較【教育ニュース】 - [学校英語教育]最新英語教育ニュースについて

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公立小学校35人学級へ移行決定に見る少人数学級のメリットと今後の課題!諸外国との比較【教育ニュース】

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2020年12月17日公立小学校の1学級の児童数を現状の40人から段階的に35人にする事が文部科学省から発表されました。

以前から強い要望のあった少人数学級実現に向けて一歩前進したことになります。

今日は、次の項目について解説紹介していきます。

今日の記事内容とポイント

  • 35人学級実現までの道のり
    35人学級に向けての文部科学省と財務省の攻防

  • これまでの日本の1学級の人数の変移
    戦後の1学級の定員数の推移を紹介

  • 世界各国の平均学級人数比較
    日本の平均児童数は世界の国々と比べると多いのか、少ないのか比較

  • 少人数学級のメリット
    少人数学級になるとどんなメリットがあるのか、秋田県や山形県の実践をもとに検証

  • 少人数学級実現に向けての課題
    少人数学級を進めていくうえで実はたくさんある課題も紹介

正直、教育に携わっている者からするとやっと一歩前進したという感じです。

1980年に45人学級から40人学級への移行が決定してからなんと40年。

人々の生活が劇的に変化したにもかかわらず全く変わらなかったものが少しだけ変わろうとしています。

40年前にはほとんど居なかった、日本語を母国語としない児童の増加、ADHDやLD等のスペシャルニーズが必要な子どもも増加しています。

以前に増して大人数の学級運営が難しくなってきていることを考えると当然の動きのように感じます。

それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。



文部科学省VS財務省!少人数学級実現に向けての攻防!

今回の文部科学省の推進する30人学級実現の最大の敵は財務省でした。

結局少人数学級にするとクラス数が増加するわけで、クラスの数が増えれば必要な教員の数が増加します。

そうなると支出が増加する事になり、それを避けたい財務省との交渉が最大の山場となりました。

まずは、それぞれの言い分を整理します。

文部科学省が目指す教育と少人数学級を推進する理由

文部科学省は”新たな学び”の実現に向けて少人数学級の実現が不可欠であると主張しました。

この”あらたな学び”とは”少人数によるきめ細かな指導体制”を差し具体的には次の通りです。

  • 安全で安心できる学校教育

  • ICTを活用した教育

  • 児童一人一人と向き合える教育

  • 3密を回避した教室環境

以上の様な教育を目指すうえで少人数学級の実現が必要であるという主張です。

ICTを活用した教育では現在デジタル教科書の導入に向けて動いています

デジタル教科書については『
教科書デジタル化の普及の現状とデジタル教科書を使うメリット、デメリットまとめ』で詳しく紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。

教科書デジタル化の普及の現状とデジタル教科書を使うメリット、デメリットまとめ

今朝のニュースで平井卓也デジタル改革担当相が小中学校で使う教科書を原則デジタル化するべきであるとの考えを示したと出ていました。過去20年どれだけコンピューター、IT分野が発達したかを考えると教科書のデジタル化は出てきて当然の論議だと思います。しかし、紙の教科書からデジタル教科書に変更した場合どのようなメリットがあるのでしょうか。...

財務省が少人数学級を拒否する理由

これに対して財務省は少人数学級の実現に向けての要求を当初断固拒否していました。

当然根本の理由は”支出を増やしたくない”ですが、そのような事は言えないので”学力向上に学級規模の縮小の効果は無いか、あっても小さい”から反対というものでした。

つまり、一クラスに児童が40人居ようが20人だろうが子ども達の学力は変わらないというものです。

一度は教壇に立って子ども達に何かを教えた事がある人ならクラスの規模がどれだけ授業の質を変えるかわかると思いますが、財務省はきちんとした証拠資料がないという事でこれを反対理由の一つに挙げていました。

結局40と30の間を取って35人学級で合意したが、、、

文部科学省と財務省の攻防は最終的にはニュースになったように35人学級という事になりました。

一見30人と40人の間で双方が平等に妥協したように見えますが実は少し違います。

文部科学省が要求していたのは小中学校の30人学級実現。

しかし今回実現したのは小学校のみ。

さらに来年から1学年ずつ5年かけて移行していく事に。

つまり今年2年生の児童は卒業まで40人学級です。

さらに現在小学校2年生は加配定数によって配置されている教師によって35人学級が全国的に実現している状況なので、来年度に限っては教員確保に必要な予算が大幅に増えるわけではありません

後から説明しますが、この加配されている教師を小学校2年生に利用する事でこれまで何らかの理由で加配されていた教師の配置がなくなる学校も出てくることが予想されます。

つまり学校によっては教師数が減少する事もあることに。

これらの課題については後半に詳しく紹介します。

日本における戦後以降の1学級当たりの児童定数の変移の歴史

今回の35人学級の前が40人学級への移行でした。

それは前述したように1980年の事です。

それでは、それ以前はどうだったのでしょうか。

日本の1学級の児童数がどのように推移してきたか簡単に紹介します。

戦後の日本の1学級当たりの児童、生徒数の推移の歴史

  • 1958年
    義務標準法制定で50人学級になる

  • 1964年~1968
    5年間かけて50人から45人学級に移行

  • 1980年~1991
    12年かけて50人から40人学級を実現

  • 2011年
    小学校1年生のみ35人学級に移行

  • 2021年~2025
    小学校2年生から順次5年をかけて小学校のみ35人学級へ

世界各国と日本の1学級当たりの平均児童生徒数の比較

35人学級への一歩踏み出した日本ですが、他の諸外国の学校はどうなっているのか気になりませんか。

そこで、OECDが提供している資料を基に世界各国では1クラス当たりの平均人数がどうなっているのか見ていきます。

世界各国と日本の1クラス当たりの児童生徒数の比較

まずは、以下のグラフをご覧ください。

諸外国の1学級当たりの平均児童数 ave of students in a class
(引用参考資料:東洋経済

小学校のOECD加盟国の平均が21.2人なのに対して日本は27.9人、中学校はOECD加盟国の平均が23.3人に対して日本は32.7人とどちらも加盟国内でワースト2位になっています。

各国とも最近は少人数学級を推進しているようで15年ほど前までは日本よりも平均人数が多かった韓国やアメリカは現在ではそれぞれ23.0人、21.2人と日本よりも少人数化が実践されています。

グラフからも分かるようにヨーロッパ諸国を中心に20人以下の国が目立ちます

日本の教室にはいかに多くの児童がいるかがわかります。

少人数学級実現で期待できる教育効果:秋田、山形県の実践から

世界各国で推進されている少人数学級はどのようなメリットがあるのでしょうか。

本当に良い効果があるのでしょうか。

約20年前から少人数学級を推進してきた秋田県と山形県の例を参考に少人数学級の利点を紹介します。

秋田県の取り組みから見る少人数学級のメリット

秋田県では2001年から30人学級を推進し始めました。

段階的に30人学級を導入し2018年に最後の小学校6年が30人学級になりました。

現在2020年秋田県の小学校1クラス当たりの児童数は23.6人、中学校が26.7人で、東京都の29.3人と31.4人と比べるとその差は歴然です。

秋田県のように独自の財源で少人数学級を推進している都道府県も多くなっています。

ちなみに2019年までの19年間における少人数学習推進事業に投じた予算は累計118億6千万円にのぼります。

それでは、そんな秋田県の取り組みから見えてきた少人数学級のメリット、教育効果は以下のものです。

  • 学力の向上

    全国学力・学習状況調査では、2019年度の都道府県別平均正答率で、秋田県は小学校の国語で1位、算数で2位。中学校では国語で1位、数学は2位、英語も上位となりました。

  • 勉強が好きな子どもの増加

    ”国語の学習は好きですか”、”算数の学習が好きですか”の質問に、”好き”と答えた割合は国語で77.3%と全国平均よりも13.1ポイント高く、算数で76.1%と7.5ポイント高くなっています。

  • 授業内容がより理解できるように

    授業内容についても国語では90.5%が”よく分かる”と答え、全国平均の84.9%を大きく上回り、算数は88.4%がよく分かると答えています。(全国83.5%)

  • 子どもの自己肯定感が高まった

  • 先生との信頼関係が高まった

    という調査結果もでています。

    また教師に取ったアンケートからは以下のような声がありました。

  • 子どもの個人差や実態に応じた指導がとても行いやすくなった

  • 心にゆとりが生まれた

  • 子ども達1人1人が学級の中で存在感が生まれ、自信を持てるようになった

  • 教室が落ち着いた雰囲気になり、思いやりを持った行動が増えてきた

    秋田県ではかなりの成果が見られています。

    引用記事(外部リンク)
    学力全国トップの秋田県は19年前から少人数学級を導入 伸びたのは学力だけではなかった

山形県の取り組みから見る少人数学級のメリット

それでは2002年から33人学級を推進している山形県ではどのような効果が見られたのか紹介します。

山形県不登校児童、欠席率の推移edu yamagata
  • 学力の向上

    少人数学級開始当初の3年間、全国標準学力検査の平均スコアが導入前と比べて向上し、その後もその水準を維持

  • 不登校児童の減少

    不登校児童数は少人数学級を始めた頃は全国平均と同じくらいでしたが、その後ぐっと下がる。

  • 欠席率の減少

    欠席率も少人数学級導入後大きく減る。

    山形県では学力の向上もですが、不登校児童の減少や欠席率の減少などに効果を感じているようです。

    児童一人一人と向き合う時間が増える事で悩みや問題等が解決されやすくなった事で子ども達の学校生活の質が上がった事になります。

    少人数学級によりより多くの子ども達が学校生活を楽しんでいという結果です。

    財務省が少人数による学力向上の効果は限定的であると主張していましたが、少人数学級における教育効果は学力以外にもあることがわかります。

参考引用記事(外部リンク)
小中学校の少人数学級を全国に先駆け18年前に導入した山形県は「不登校」と「欠席率」が減少していた

今後少人数学級を推進していく上での4つの課題

少人数学級における教育効果がわかりました。

それでは、今後これらの教育効果を最大限に発揮できるようにするための残された課題は何でしょうか。

今回は今後も大きなハードルとなりうる課題4つを紹介します。

少人数学級を推進していく上での課題4つ

  • 教員の確保

    文部科学省は今後5年かけて1万4000人の教職員定数の改善を図ると発表しています。

    ここで問題となるのが教員の確保です。

    小学校で3割、中学校で6割の教員が過労死ラインを越えて働いていることが調査で分かっています。

    世界で一番労働時間の長い教師は日本です。

    就職氷河期の頃は約12倍の倍率があった教員採用試験も昨年は全国平均で2.8倍でした。

    教師志願者が居なくなっていることがわかります。

    萩生田光一文部科学相は教職の魅力の向上を図り、現職教師の離職率の低下、教師志願者の増加を図りたいと述べていましたが、なかなか簡単にはいかないと思われます。

  • 教師の質の向上

    先にも述べましたが、なり手が減ってきている教師ですので、質を維持、または向上する事が大変になってきます。

    教師がいないから大学卒業したての若い人を大量に採用すると経験不足から質が低下する可能性もあります。

    特に現在35人以上の学級が多い大都市では教師不足が深刻になる可能性があるので、教師確保とともに質の向上のために何か対策をする必要があります。

  • 教室の確保

    秋田県や山形県でも少人数学級を推進し始めた頃は教室の確保ができない学校が出たとありました。

    少人数によりより教育環境を整えようとしているのに、教室が十分にないのでプレハブ校舎でというのは本末転倒です。

    現在35人以上の学級が多いのは東京等の大都市です。

    これからきちんとした準備が必要になりそうです。

  • 加配定数が削られる

    来年度小学二年生を対象に35人学級が実施されます。

    しかし、先にも述べた様に加配定数により配置されている教師を2年生の担任として利用する事で教師の採用人数を最低限に抑える事になるそうです。

    つまり、日本全体でみると教師の数はそれほど変化する事はないという事です。

    大都市の教師が必要な学校に教師が加配される事になり、地方の現在教師が加配されている学校から教師が削られる事が考えられます。

    現在加配されている教師にはそれぞれ理由があります。

    日本語が話せない子どもの世話、ADHDなどのスペシャルニーズが必要な子どものサポート又は、学校単位でプロジェクト校に指定されている場合の加配など学校や教師の負担を減らすためがほとんどです。

    つまり、学校によっては教師の人数が減ることになり仕事が増える可能性もあります。

以上の4つが今一番に考えられる課題になります。

今後国が中心になって地方自治体が協力しながら解決していく必要があります。

最後に

今回は小学校での35人学級が来年度から段階的に移行されていく事が決定されたというニュースを元に少人数学級のメリットそしてこれから解決していく必要がある課題等を紹介しました。

最終的には子ども達が楽しいと感じる学校生活が送れることが大切になってきます。

そのために今後も国、地方自治体、そして学校が協力しながら学校教育をより良いものにしていく必要があります

今回の35人学級が最大限の教育効果を発揮できるように対策を進めていきたいものです。


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