朝日町で行われた公開授業を基に学習者向けデジタル教科書導入に向けての課題をと考える【英語教育ニューズ】
昨日のニュースに以前も記事にしたデジタル教科書についてのものがありました。
今回のニュースは富山県の朝日町の小学校でデジタル教科書の実証実験をしているところがあり、その効果・影響の実証研究の一環として授業が公開され、文部科学省の担当者等が授業視察をしたというものでした。
今回は特に学習者用のデジタル教科書についての考察を中心に、授業を参観した文部科学省の方、教育委員会の方、児童の意見等も紹介するとともに、今現在の状況や課題をも一度整理してみたいと思います。
デジタル教科書のメリット、デメリットについては『教科書デジタル化の普及の現状とデジタル教科書を使うメリット、デメリット』で詳しくまとめあります。
こちらも合わせて読んでみてください。
デジタル教科書を使うメリット、デメリットまとめと教科書デジタル化の普及の現状
今朝のニュースで平井卓也デジタル改革担当相が小中学校で使う教科書を原則デジタル化するべきであるとの考えを示したと出ていました。過去20年どれだけコンピューター、IT分野が発達したかを考えると教科書のデジタル化は出てきて当然の論議だと思います。しかし、紙の教科書からデジタル教科書に変更した場合どのようなメリットがあるのでしょうか...
1. デジタル教科書とは?その種類は2つ
2. デジタル教科書実証実験指定校とは
3. 今回のデジタル教科書を利用した授業の内容と参加者視察者の声
4. 学習者用デジタル教科書導入に向けた課題や問題点
5. 最後に
デジタル教科書とは?その種類は2つ
まず、デジタル教科書と一言に言っても大きく分けて2つあります。
1つは今回取り上げられている学習指導者用デジタル教科書です。
つまり、児童がタブレットなどを使って利用する児童用のデジタル教科書です。
もう一つが児童用よりも以前から導入されている指導者用デジタル教科書があります。
こちらは電子黒板等を利用する事により授業で利用できる電子教科書の事で、教師が主に授業で使用するものです。
学習者用デジタル教科書(児童用)
指導者用デジタル教科書(教師用)
学習者用デジタル教科書とは何か
指導者用のデジタル教科書の方が現在普及しており馴染みがある方が多いかと思います。
では、学習者用デジタル教科書とはいったいどういったものなのかご存じでしょうか。
紙の教科書の内容全部をそのまま記録した電磁的教材の事
厳密に定義すると音声やアニメーション等のコンテンツはデジタル教科書には当たらず、補助教材のデジタル教材になります。
デジタル教科書とデジタル教材の機能一例
画像の拡大ができる
音声読み上げ機能がある
ネイティブの発音を流すことができる(英語)
ペン機能を使って書き込むことができる
その他さまざまな機能があります。
デジタル教科書実証実験指定校とは
今回視察を受けた富山県朝日町の学校はどういった学校なのかまず紹介します。
デジタル教科書実証実験指定校
今回視察を受けた富山県朝日町の2つの小学校は今年からデジタル教科書を導入、7月に文部科学省から全国初の実証実験の指定を受けています。(現在は全国で3校が指定されている)
現在は5,6年生の国語、算数、英語の授業と特別支援児童の指導の際にデジタル教科書を使用中。
現在は、ほぼ毎日デジタル教科書を児童は使用して学習しているようです。
この指定校はデジタル教科書が紙の教科書に代わることが可能なのかや、効果的利用方法を探っています。
今回のデジタル教科書を利用した授業の内容と参加者視察者の声
今回の視察の様子をまとめてみます。
今回のデジタル教科書を利用した授業の視察内容
今回、文部科学省の担当者や有識者が見学したのは6年生の英語の授業です。
授業ではデジタル教科書を利用して、スゴロクのようなゲームで耳を慣らしたり、連休でしたことを英語で発表する活動がされたようです。
今回の授業に参加した児童の声
”自分で書いたり、聞いた入りできるのでデジタル教科書の方が好き。”
”タッチしたりして音声を聞きながら自分で理解できる。”
”ペンで書ける機能がいい。”
”分かりづらい単語もタブレットで何度も聞けるから分かりやすい。”
などの声が聞かれました。
今回視察した参加者の声
”英語の練習に終わらず、相手を知り、自分を知ってもらう言語活動の授業で良かった。デジタル教科書の音を活用していた。”
”視覚や聴覚から能動的な学びが見られ、英語に親しんでいた。”
”デジタル教科書は豊かな言語表現の有効なツールになり得る。”
”自分の能力に応じてゆっくりとしたスピードから徐々にスピードを上げて聞いていくということも可能ですので、子どもたち1人1人の能力に応じた形で学習が進められるというのがメリットだと思う。”
-
”普及が図られた暁にはデジタル教科書を自宅で活用するというのも1つの選択肢になってくると思います”
というような声が聞かれました。
学習者用デジタル教科書導入に向けた課題や問題点
現在教科書のデジタル化を進めていくうえでいくつかの課題が上がっており、討論されています。
学習者用デジタル教科書導入の課題、問題点
デジタル教科書は無償では無い
紙の教科書と違い現在デジタル教科書は無償でないので、導入には予算が必要になる。
今回の朝日町では教育委員会が負担している。
デジタル教科書は1冊200~2000円程度。
さらにデジタル教科書の利用許可(ライセンス)は1年なので、この予算を毎年自治等が負担する事になる。授業時間の二分の一未満という制限がある
デジタル教科書が授業で使用できるようになったのが昨年の4月で、文部科学省が使用は授業時間数の2分の1という条件を付けている。
この条件は見直しを求める声が出てきており現在討論中。
2020年12月20日この制限を撤廃する方向で政令を改正する事が文部科学省から発表がありました。
詳しくは『デジタル教科書の使用時間制限撤廃によるメリットとデメリットを考察!』で紹介していますので参考にしてください。デジタル教科書の使用時間制限撤廃によるメリット、デメリットと今後の課題を考察!
昨日のニュースに”デジタル教科書の使用時間制限撤廃を決定した”というものがありました。あまり詳しくない方のために補足をすると、現在、文部科学省が筆頭に討論しているのは”学習者用のデジタル教科書導入にあたっての課題”です。つまり、子ども達が実際に机の上で触って学習する教科書をデジタル教科書にしようという動きです...
全国の小中高の普及率が今年三月時点で8%
色々な課題があるのでなかなか普及していないのが現状。
ネット環境や子どもの健康面の心配
多くの子ども達が同時にデジタル教科書を使用しても大丈夫なネット環境の設備や長時間デジタルコンテンツを使用する子ども達の県境面の心配などがある。
デジタル教材の方が学習効果が低いという意見がある
デジタルの方が学習効果が低いという研究結果を発表している人もいるようで、効果的な使用方法を探っていく必要があります。
デジタルコンテンツが子ども達に与える悪影響について書かれている『スマホ脳』もデジタル教科書のデメリットを考える上で参考になります。
スマホ脳(新潮新書)リンク
デジタル教科書導入に向けての現在の動き
来年度の予算に50億円程度要求
小学校5.6年生で1教科、中学生で2教科の導入に向けて来年度の予算に50億円程度要求しています。
しかしこの50億円はデジタル教科書の費用であって、冒頭に説明したように、音声コンテンツ等はデジタル教科書ではないため、国費負担の対象外になってしまうなど課題があります。95%の教科書会社はデジタル教科書を発行予定
教科書会社は来年度までに95%以上の小学校教科書のデジタル教科書を発行する予定。
2024年度実施を目指して進めている
次回の教科書改正の2024年に完全導入を目指いして今後デジタル教科書については討論されていくようです。
最後に
本日は、富山県朝日町の小学校でデジタル教科書の実証実験の授業公開が行われたニュースを基に、公開授業の様子や、参加者、観覧者の感想、そしてデジタル教科書導入に向けての動きと課題を紹介しました。
いち教師としてデジタル化は避けては通れないと思います。
まだまだ課題が多いですが、子ども達がより良く学べるように利用できるように準備していく必要があります。
特に今年度から始まった小学校での英語教育では、英語が得意でない担任の教師の方がデジタルコンテンツを利用する事で、子ども達にネイティブの発音を聞かせる事ができたりと利点は多いと思います。
メリットを生かし、デメリットが最低限になるように利用していきたいものです。
最初はどの教師も抱くICT教育にまつわる「10の不安」を三重県松阪市立三雲中学校での実践例を具体的に解説して、どのようにICTを活用していったかを紹介している書籍『無理なくできる 学校のICT活用―タブレット・電子黒板・デジタル教科書などを使ったアクティブ・ラーニング』は教師の皆さんにお勧めです。
これからも教科書のデジタル化についての関心を持っていきましょう。
それでは、今日も良い一日を。
- 関連記事
-
-
英語圏で流行った18の”Buzzword”(流行語)で2020年を振り返る!あなたの”Word of the year”(今年の言葉)は3密?
-
デジタル教科書の使用時間制限撤廃によるメリット、デメリットと今後の課題を考察!【教育ニュース】
-
大阪府とUSJが連携して取り組む英語教育とは?企業と提携する英語教育のメリット、デメリット【英語教育ニュース】
-
朝日町で行われた公開授業を基に学習者向けデジタル教科書導入に向けての課題をと考える【英語教育ニューズ】
-
公立小学校35人学級へ移行決定に見る少人数学級のメリットデメリットと今後の課題!諸外国との比較【教育ニュース】
-
小学校英語教科化/早期化1年目を終えて学校現場の現状をイーオンの「小学校の英語教育に関する教員意識調査2021」から考察
-
2022年度から小学校5・6年生に教科担任制が本格導入されたら学校現場は助かるのか【教育ニュース】
-
デジタル教科書のデメリット、メリットまとめ!教科書デジタル化の普及の現状【教育ニュース】
-
気持ちを新たに苦手な英語を克服したい方に!
⇒特典いろいろ!Amazon Prime加入で新生活をさらにお得に!




